「経費の立替業務そのものを無くすことで、大切な時間を生み出したい。」Stapleが目指す”法人キャッシュレスの世界”(後編)
企業にとって日常業務である経費精算業務は、紙やExcelで従業員から上がってきた申請を月末に経理担当が処理をするという、非常に非効率かつ負担が大きいものでした。近年はこうした経費精算の効率化サービスが数多くリリースされ、費用対効果を踏まえて導入を検討される企業も増えてきています。
しかし、そもそも「経費精算」という業務自体に疑問を持っている方は少ないのではないでしょうか。クラウドキャストが提供する「Staple」の原点は、代表・星川が前職で「ひとりの従業員」として働いていた頃に感じた経費精算のわずらわしさであり、今でこそ当たり前の慣習となっている「従業員個人による一時的立て替え」に対する疑問を追求した結果にありました。
インタビュー後編では、導入が拡大している「Staple」のその先に目指している、キャッシュレスとペーパーレスを同時に推進することで働いているすべての人が幸せになり、企業の競争力も高まる「法人キャッシュレス」の世界観を、弊社代表・星川に聞きました。
(後編はこちら)

(クラウドキャスト代表取締役 星川高志)
プライベートも充実することで人生が豊かに楽しくなる、という想いを製品に込めた
ーー 2018年に製作された、「Staple (ステイプル) 〜 その時間を、もっと楽しく。」という3分弱のコンセプト動画では、「Staple」を使う従業員が効率化した時間で人生を充実させる様子が描かれています。この動画が当時制作された背景と、伝えているメッセージについて教えて下さい。
この動画では、「Staple」が入る前と後で世界観が変わることが伝わるように制作しました。紙を使った作業が多くて、「今日は帰るのが遅くなるからごめんね」と家族に伝えていたお父さんが、「Staple」を使うと無駄な作業がなくなり時間を作れるようになり、そのできた時間で家族とゆっくり過ごすことができる、など。他にも、キャリアップのために語学を習ったり、次のなりたい自分に時間を使ったりと、私たちは人を中心にサービスを考えているので、単なる作業効率が良くなっただけではなく、プライベート側も充実して人生が豊かに楽しくなることをメッセージに込めました。
(動画はこちら)

ーー 日本の働き方改革は、時短型の「ワークライフバランス」から、近年は働きがいやワークエンゲージメントを重視した「ワークアズライフ」という考え方も注目されています。「Staple」が目指す働き方改革のあり方について教えて下さい。
まず私自身が「楽しんでがむしゃらに働いた」タイプでした。マイクロソフトに在籍していた20代の頃は、夜遅くまで仕事をして、やりがいも感じていました。しかし、30代で独立し会社を起こしたり、子供が生まれ家族との時間をいかに作るかを考えたことで、仕事と人生が別にある時短型の「ワークライフバランス」にとどまらず、仕事と人生が重なっていく「ワークアズライフ」の環境を整えていきました。
本来、長時間働くのはパフォーマンスが落ちていくので、いい仕事をするためにはしっかり休んで、しっかり眠らないといけません。当社も「クリエイティブホリデー制度」といって、5日連続で休暇を取る決まりを作ったり、毎日の残業時間を減らす工夫をしたりと環境を整備してきました。
特にソフトウェア開発はクリエイティブな領域が大きいです。同じような課題に2週間かかる人もいれば、3日でそれ以上の成果を出せる人もいます。当然後者の方が評価は高くなるでしょう。プロスポーツと一緒ですが、結果を出すためには体調管理が重要。短い時間でいかに最大の成果を出してもらう環境づくりこそが経営者の仕事だと思っています。より人が財産になってきた時代に、制度など表面的に変えるだけではなく、働くことに対する考えを本質的に変えていくべきではないでしょうか。
立替経費は個人が会社に対して”貸している”お金という前提を忘れてはいけない
ーー 日本企業、特に中小企業に根強く残る「紙とExcel文化」について、クラウドキャストが掲げる「法人キャッシュレスの世界」は、この文化や商慣習をどのように変えてゆくのでしょうか。
紙やExcelで行っている作業を自動化するのは効率化の分野です。私たちは本質的に作業自体を無くすことで、ゲームチェンジを目指しています。
例えば、従業員が一時的に立て替える経費は会社への貸しなので、経理などから「早く経費申請出さないとお金返ってこないから対応してね!」など言われて申し訳ない気持ちになるのは、そもそも根本的にはおかしいことです。
しかし、かくいう私自身も会社員の時はなんの疑問も持たなかった。そこに気づいたとき、大事なのは「効率化」ではなく、キャッシュレスとペーパーレスを同時に進めることで、作業自体を一気に無くすことだと思った、それが「法人キャッシュレス」の世界観です。

データから紙、紙からデータという”遠回り”を、キャッシュレスとペーパーレスの同時推進で解消する
ーー 「法人キャッシュレス」を実現するには「キャッシュレスとペーパーレスを同時に推進すること」が重要ということですが、近年の法律改正や制度改定の面でも、この土台は整ってきているのでしょうか。
改正電子帳簿保存法によって、領収書を電子データとして保存することが法律で認められるようになったため、ペーパーレス化は大分進んだように思います。私たちはその先を見据えていて、「紙の領収書を(手入力やAI-OCRなどで)デジタル化する」という発想ではなく、「領収書自体を根本的になくす」という世界を目指しています。例えばPOSレジには会計情報がデータとして存在するのに、紙として出したものをわざわざ経費精算時に手入力してデータ化しています。POSのデータをそのままAPIでつないで活用できたら工数削減にも、(改ざんや偽装といった)不正防止にもメリットが大きいと思います。
「Staple」では決済した瞬間にアプリに通知がくるので、データ連携という点では既にペーパーレス化しています。ただしカードの決済は消費税の情報が記載されていないので、まだエビデンスとしてのレシートの役割は残るでしょう。このレシートのアップロード機能は米国でもまだ残っています。この点は電子レシート化といった解決策もあり、数年前にFintech協会理事として在籍中に議論させて頂きました。
コロナによる働き方の変化で「Staple」の新たな使い方も
ーー 新型コロナウイルスの影響で、日本の働き方は大きく変化したといえます。その中で、現在のユーザー企業の中で「Staple」ならではの利点を活かした新たなニーズや、活用法も出てきているのでしょうか。
まず社会的な流れとしては、リモートワークが前提になりました。その結果、通勤定期券を廃止して通勤費を実費精算に切り替えた企業も増えているようです。企業からすると固定費に近かった定期券のコストを抑えられるようになりました。
しかし、従業員は通勤ごとの交通費精算の手間が増えたり、振り込まれる給与の額面の見た目上、定期券代がなくなった分「あれ!?手取り金額が下がっているぞ」と感じてしまう人もいらっしゃるのではないでしょうか。自宅で仕事をすると光熱費や通信費も上がっているので、リモートワークをしている人には別のケアが必要かもしれません。
当社もすでに実施してますが、いくつかの企業では、自宅のリモートワーク環境整備の予算を出していたり、光熱費や通信費の手当をしているという企業も耳にします。当社ではそれらに加え、リモートワークの頻度やレベルに応じて1ヶ月分のコーヒー代を「Staple」にオートチャージする「コーヒーバジェット制度」を福利厚生として加えました。一部の企業では固定オフィスを離れ、シェアオフィスを活用する事例も目にするので、浮いた固定費を従業員に還元する際には「Staple」の活用も広がってくると思います。

ーー 最後に、「法人キャッシュレス」の世界を通して、働く全ての人に伝えたいメッセージをお願いします。
非効率な作業に忙殺されるのではなく、よりインパクトのある重要な仕事に取り組んで欲しい。これが伝えたいメッセージです。「Staple」も、そうした重要な仕事ができる時間を生み出すサービスでありたいと思います。
まずは個人の体験から変えていくことで、「法人キャッシュレス」分野のゲームチェンジャーになっていきます。そしてこの世界観に共感頂ける方と、これからの働き方を一緒に作っていきたいです。