立替金とは? 立替経費との違いや仮払金について解説

2022-03-31
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日常生活の中で、誰かが支払うはずの代金を、一時的に自分が負担することがあると思います。それを「立て替える」と言いますが、企業においても代金を立て替える場面があります。それらは「立替金(たてかえきん)」と「立替経費」とよばれます。

またよく似た使われ方をするものに「仮払金」があります。「立替金」と「立替経費」と「仮払金」は何が違うのでしょうか。

ここでは「立替金」と「立替経費」と「仮払金」の意味と、どんなときに発生するのか、立替精算を減らすメリットなどを解説します。

▌立替金とは、会社が一時的に立て替えた代金

立替金とは、本来従業員や役員、取引先などが支払うべき金銭を、会社が一時的に立て替えたときの勘定科目のことです。勘定科目5要素では資産として扱われます。一時的に立て替えているだけなので、会社の経費にはなりません。

立替金となる例としては、

  • 雇用保険料などの社会保険料
  • 旅費
  • 従業員の給与の前貸し
  • 配送料や手数料
  • などがあります。

    立替金の仕訳例

    立替金の仕訳の例は以下の通りです。

    たとえば従業員の旅費20000円を一時的に会社が立て替えた場合の仕訳

    借方 貸方
    立替金 20000円 現金 20000円

    立て替えた旅費を現金で支払ってもらったときの仕訳

    借方 貸方
    現金 20000円 立替金 20000円

    立替金に消費税はかかる?

    立替金に消費税はかかりません。しかし、請求の段階で売上げ扱いとなり、消費税がかかってしまう場合があります。

    たとえば、立て替えた手数料や送料を、他の請求金額に合算してしまったり、区分なく通常の請求書で徴収する場合です。また、立て替えた実費に対してマージンを上乗せしている場合は、全額課税対象となります。

    立替金を請求する場合、手数料分などその内容を明確に区分して、相手方の請求書に明示する必要があるとともに、立て替えた際の領収書も相手に渡す必要があります。

    なお、立替金に利息はつきませんが、回収までに時間がかかりそうな場合は、貸付金として処理するほうがいいかもしれません。

    advancing money tax

    ▌立替経費とは、従業員が先に立て替えた経費

    「立替金」と非常によく似た言葉に「立替経費」があります。どちらも立替ですので同じような印象を持ちますが、実は違います。

    立替金は勘定科目の1つで、会社が先に一時的に立て替えているもので経費ではないのに対して、「立替経費」は、本来会社が業務上負担すべき代金を、従業員が一時的に支払っているものを指す社内用語です。

    立替経費の例としては以下のようなものがあります。

  • 外出のついでに頼まれて近くの店で文具などの消耗品を購入。代金は従業員が立て替えた。
  • 出先で会社のパソコンの周辺機器が壊れてしまい、急いで代替品を購入。費用は従業員が立て替えた。
  • 急な出張が決まり、チケットや宿泊費、さらに取引先への手土産を従業員が立て替えた。
  • 急な取引先との会食が決まり、接待のための飲食費を従業員が立て替えた。
  • 立て替えた経費は消費税がかかる?

    従業員は社内で精算手続きを行うことで、立て替えた代金を回収します。立替経費は「実費精算」が基本です。精算することで、従業員が支払済みの額が戻ってくるので、所得税の課税対象ではありません。

    一方、会社の経理上では「旅費交通費」や「消耗品」「接待交際費」などの勘定科目で経費として処理します。

    フリーランスの立替経費が源泉徴収の対象になることも

    フリーランスの場合、請け負った作業の都合上、交通費や宿泊費を一時的に立て替えて、後日代金とともに立替経費として請求するケースは多々あるでしょう。その場合の旅費や交通費は、原則として報酬料金の一部として扱われるため注意が必要です。

    そうしないためには、請求書内で立替分として明確に区別する必要があります。ここでポイントになるのが、立て替えた代金の領収書の宛名です。

    領収書の宛名が発注元の会社宛になっているときは源泉徴収が不要になります。しかし、個人宛の領収書では源泉徴収の対象となります。発注元の宛名が書かれた領収書を発行してもらい、請求時に忘れずに添付しましょう。

    paying in advance

    ▌仮払金とは

    立替金や立替経費と似たものとして仮払金があります。

    仮払金とは勘定科目の1つで、必要な資金を事前に概算で支給するものです。具体的に何を買うのかまだ明確ではないものの、将来的に会社の経費となることは明らかなものに対して、確定するまで一時的に支払われます。

    仮払金となる例としては以下のものがあげられます。

  • 従業員が出張する際、出張費用として会社がおおよその金額で従業員に現金を支給する
  • 取引先と食事をする際、ある程度見込み額を、会社の交際費として先に会社が従業員に現金で渡しておく
  • 仮払金はあくまでも概算で支払われるため、余った場合は仮払精算後に返還、不足時(従業員が立て替えている場合)は会社が追加で支払います。

    ▌立替金と仮払金、立替経費の共通点と違い

    立替金と仮払金はどちらも、「勘定科目」の名称であり、会社の「資産」に計上されるという点で共通しています。また、会社側から一時的に支払うという点でも同じです。

    立替金は会社の経費ではありませんが、仮払金は会社の経費として見込まれることを前提に支払われます。また、立替金は金額が分かった時点で支払われるのに対して、仮払金は金額が確定する前に概算で支払われる点が異なります。

    立替金と立替経費は、立替金が会社が金銭を立て替える場合に使われる勘定科目なのに対して、立替経費は従業員が立て替えた際に使われる社内用語です。

    従業員の立場としては、立替経費と仮払金のほうが身近に感じることでしょう。

    ▌立替や仮払のデメリット

    金銭を立て替えてから請求する、仮払金を申請して支給を受けるというプロセスにはさまざまなデメリットを含んでいます。

    経理部門では現金を準備する、振込み手続きを行う、領収書をチェックする、伝票を管理するという業務が発生します。申請期限を守らない従業員も出てくるため、従業員が増えるほど管理が煩雑になり負担が増加します。場合よっては伝票の金額記載ミス、カラ出張などの不正利用の恐れもでてきます。

    従業員側は、事前に仮払いを申請し上司の承認を得る、領収書やレシートを忘れずに受け取り紛失しないよう管理する、期日までに速やかに精算手続きを行う、場合によっては出社する必要に迫られるといった負担が生じます。

    特に従業員が経費を立て替える場合、それは従業員側の金銭的な負担となり、場合によっては生活を脅かす恐れもあるため、避けたいところです。

    たとえば遠方に1回出張するだけでも、事前に必要な旅費を洗い出して仮払い申請を行う、現金を受け取ったら領収書を管理する、帰社後に書類を作成して仮払金の残金や不足分を精算するといった手続きが生じます。特に出張が多い人は、このような本来の業務とは異なる手続きがたまるのはストレス以外の何ものでもありません。

    advancing money summary

    ▌まとめ

    立替金、立替経費、仮払金、いずれも会社の業務遂行上はなくてはならないものですが、経理上の負担になりやすい点がデメリットでした。

    立替や仮払そのものを減らすことができれば、会社と従業員の双方の負担が大幅に軽減できるだけでなく、経費の不正利用や小口現金の管理を減らせるというメリットがあります。

    立替や仮払の中でも、特に多いのは旅費交通費ではないでしょうか。

    領収書が増えるということは、自己負担している金額が増えるということを意味しますから、早急に精算したいところですが、まとめて精算しようと後回しにしているうちに、精算が必要な領収書は増加し、やる気は反比例しがちです。やがて領収書を紛失したり、期限を忘れて経理部門の業務を増やすという結果に繋がってしまいます。

    また、自ら負担しなくて済む仮払い申請も、書類を書く手間、承認を得る時間、現金を受け取るまでのタイムラグ、受け取った現金や領収書、釣り銭の管理などがあるため、1つ1つは小さくても、精算が終わるまで常に頭の片隅で意識し続けなくてはなりません。

    このようなタスクは少しずつパフォーマンスにマイナスの影響を与えますから、発生するたびにつどスピーディに対応し、本来の業務に集中したいものです。

    立替や仮払い精算処理を極力減らし、現金を持ち歩く不安も解消したいなら経費精算システムとコーポレートカードがセットになったクラウド型の経費精算システム「Staple(ステイプル)」の導入がおすすめです。

    Staple(ステイプル)」は、インターネットに接続できる環境であれば、どこにいても経費精算がペーパーレスかつキャッシュレスで行えます。リモートワーク中でも立替経費精算も、レシートや領収書を写真にとって送るだけなので、わざわざ出社する必要はありません。

    Staple(ステイプル)」には連携して使える法人プリペイドカード「Stapleカード」があるため、仮払金の受け取りもスピーディでキャッシュレスです。

    Stapleカード」は国内外のVISA加盟店で利用できるので、何に使ったのかも明確になるので、不正利用も防げます。使用後の釣り銭を経理部門に持って行くという手間も要りませんし、経理部門では現金を数えて伝票と一致するか確認する手間も不要になります。