リモートワークの導入には多くのメリットがあることをお伝えしました。特に経費管理をクラウド化できると、ペーパーレス化が進み、経費精算のための出社を避けられますし、業務の効率化も図れます。
経費精算で必須なのが支払いを証明するもの。一般的には領収書が使われますが、レシートを領収書がわりにできるのか悩む方もいらっしゃるはず。
そもそも領収書とはなんでしょうか。領収書に印鑑は必要なのでしょうか?捺印のないレシートは、法的に領収書と同じ扱いができるのでしょうか。
結論から言うと、捺印のないレシートでも問題ありません。しかし気をつけたい点もあります。この記事では領収書やレシート、そして印鑑について詳しく説明します。
▌領収書の必須記載事項と注意点
「領収書」とは金銭の受領を証明する証憑書類のことです。
オフィス用品として一般的に購入できる複写式のものには「領収証」と書かれていますが、「領収書」と「領収証」の意味に大きな違いはありません。国税庁では受領事実を証明するために作成されたものとして広義で「領収書」、狭義で「領収証」としています。
では、領収書にはどんなことが記載されるべきなのでしょうか。
国税庁から、領収書として認められる条件とは以下の通りです。
まず宛名ですが、ここには交付を受ける事業者や個人の名称、氏名を記載します。空欄の場合は正式な書類として認められない可能性があるので注意が必要です。
よくあるのは宛名に「上様」と書かれるケースです。これは相手への敬意や上得意客であることを示す古くからの名残で、商習慣として一般化しています。
宛名が上様でも経費精算は可能です。しかし誰が使用したものかがわからず、利用者によってはそれが経費として認められるかが不明瞭になります。後に税務調査で問題になる可能性もあるため、できるだけ社名を明記してもらったほうがいいでしょう。個人名も可能ですが、経費精算上許されるかどうかは社内ルールの確認が必要です。
金額を記載する際には、先頭は「¥」で始め、数字の末尾には「※」や「−」を付けます。さらに0の表示3つごとに「,」を付けます。見慣れていて当たり前のように思えるかもしれませんが、ルールとして定められているのです。
▌領収書と印鑑の豆知識
領収書の印鑑は不要だが、偽造防止のためにあったほうがいい
領収書といえば、社名に重なるように印鑑が押されているものをよく見かけるでしょう。しかし、中には押されていないものもあります。この印鑑は必要なのでしょうか。もし印鑑が押されていない領収書を受け取ったら、それが経費精算に使えるのかどうか心配になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
法的には領収書の印鑑は必須ではありません。捺印のない領収書でも税務上問題はありません。とはいえ、印鑑は押してあったほうがいいといえます。理由は偽造防止になるためです。経費精算上、取引先の印鑑のあるものを求められる場合もあるので、商習慣上の観点でも印鑑はあったほうがいいでしょう。
印鑑を押すなら、社名に被るよう角印を使うのが理想的
では、領収書を発行する場合、どんな印鑑なら認められるのでしょうか。
印鑑そのものが法的に求められているものではないので、様式が決まっているわけではありません。しかし、領収書の印鑑は会社の認印としての「角印」が一般的です。角印とは形が四角い印鑑で、特に法的に登録して認められているものではありません。
一方、印鑑には形が丸い「丸印」もあります。これは法務局に登録され、会社の実印として認められたものを指します。丸印をむやみに使うと、実印そのものを偽造される怖れもあります。ですから、領収書用に使うなら角印がおすすめです。担当者のネームスタンプも添えると、さらに丁寧な印象を与えることもできます。
個人事業主の場合、個人名の印鑑でも問題はありません。このとき店頭で誰でも購入できる朱肉不要のスタンプも利用できます。しかし、一般的な名前の印鑑は誰でも購入できるため偽造しやすくなります。個人事業主でも屋号の角印があれば理想的です。
押す場所は、領収書に記載された会社名や住所の部分にかかるようにします。収入印紙が貼られている場合、収入印紙と領収書にまたがるように押される消印も必須です。
ちなみに、捺印自体を誰が行うかは問題ではありません。
領収書に印鑑を押し忘れたら?
領収書に印鑑を押し忘れても、そもそも法的に必須ではないので問題にはなりません。
商習慣として捺印されていたほうが心象もよく、また偽造防止効果も期待できること、そして受け取る側の経費精算の都合上、印鑑はあったほうがいいとされるケースも考えられるため、気になるようなら改めて押し直すなどの対応をしましょう。
ただし、収入印紙が貼ってある場合、消印の押し忘れは問題になりますので注意しましょう。
印鑑の色は何でもいいが、赤が無難
領収書に印鑑を押す法的義務はないので、押す際の色に決まりはありません。ただし一般的には赤にしておくと無難です。
社名が黒いインクで印刷されている、または黒いゴム印だった場合、同じ黒では見えにくくなるためです。赤ならすでになじみのある色ですので、印鑑が押されているとすぐにわかりますし、押し忘れにも気づきやすくなります。
レシートは領収書として認められるが注意点も
経費精算が必要なのに領収書をもらい忘れてしまい、レシートしかないということも起こります。レシートは領収書として使えるのでしょうか。
レシートによっては「領収証」と印字されたものもあります。レシートと領収書の項目を比較すると、レシートに足りないのは宛名のみ。そのため、領収書の代わりとして認められるケースもあります。
しかし、宛名がないためそのレシートが本当に業務上の目的で従業員が支払ったものかどうかを確認することができないというデメリットはあります。他者の使用したレシートを不正に経費精算に使われる可能性もあります。
また税務調査があった場合、宛名のないレシートだけでは公私の違いを区別できないため、本当に正しく利用されたのか証明できません。額によっては問題になることも考えられます。特に高額の場合はレシートでなく、きちんと領収書を発行してもらうほうが確実です。
領収書に印鑑を押さずに印影を印刷してもOK!
最近ではインターネットを介した取引が一般化しているため、領収書がメールで送られてきたり、サイトからPDFファイルとしてダウンロードすることも増えてきました。
デジタル化された領収書の場合、印鑑はどうしたらいいのでしょうか。一旦印刷して捺印してから、再度ファイルに変換すべきでしょうか。最初からデータ化した印影を使ってはいけないのでしょうか。
もともと印鑑自体が義務ではないため、印影の印刷でも問題はありません。むしろ印刷であっても、印影があれば偽造防止に繋がるというメリットがあります。
この印刷できる印影は「電子印鑑」と呼ばれます。印影データを作成できる専門のサイトを使うと独自の印影を作成できます。実際に利用している印鑑の印影を電子化したい場合は、一度紙に押印したものをスキャナでパソコンに取り込んで画像化します。
印影データを作成しておくと、パソコンで作成するドキュメントに写真のように取り込んで印刷することもできますし、PDFファイルとして保存することもできるようになります。
ただしデータとして流出すると悪用される可能性もあるため、扱いは慎重にしましょう。特に実印をデータ化する場合は慎重に行いましょう。
▌電子印鑑で経理業務はどう変わるのか?
2022年1月1日より改正された電子帳簿保存法が始まります。
新しい電子帳簿保存法では、電子取引において電子化された領収書を受け取った場合、データのまま保存することが義務づけられます。このことからも、今後一層ペーパーレス化が進むことが予想されます。領収書の電子化にともない、前述の電子印鑑のニーズも増えていくと考えられます。
電子印鑑は印鑑の本体を必要としないため、大切な印鑑を紛失する心配がありません。また、常に明瞭な印影を残せるため、押印時にありがちな朱肉の不調や、かすれやブレといった押印の失敗もありません。
電子化された書類を受け取った際、いちいちプリントしなくても印影をつけられるため手間とコストを削減できるだけでなく、パソコン、タブレット、スマートフォンと利用できるデバイスの幅が広がることで、仕事の流れが早くなることは間違いありません。当然作業場所も固定されないため、リモートワークも可能になります。
無料で作成した画像を電子印鑑として使っている場合、画像としてコピーされ、悪用される危険があるため印影データの管理は大切なポイントです。特に企業間の取引に使うにはリスクがあるというデメリットはありますが、ルールを設けるなどして有効に活用すれば経理業務のリモート化、効率化を推し進められることは間違いありません。
▌領収書の印鑑|まとめ
法律上、領収書に印鑑は不要です。
しかし、経理側で押印のない領収書を認めない場合もありますし、領収書の偽造防止の点でも印鑑そのものをなくすことは難しいでしょう。電子印鑑の使用を認めないケースもありえますから、最終的には受け取る側の都合にあわせた領収書が用意できることが望ましいといえます。
とはいえ、時代はリモートワーク、ペーパーレスへと進んでおり、業務の効率化の点でも「ハンコ出社」はもう時代遅れになっているのも事実です。領収書の電子印鑑の導入は、ペーパーレス化の一歩として検討する価値はありそうです。
経費精算システムをクラウド化し、ペーパーレスで行える「Staple(ステイプル)」は、紙の領収書やレシートの束が不要にできます。
印鑑がない紙の領収書やレシートでも、スマートフォンで写真を撮ることで簡単にデジタル化でき、利用者とその目的を確認した上で都度承認できるため、不正利用を防ぐことができます。
サーバ内に保管される領収書データはタイムスタンプが付与され、改ざんができない状態で保存できるので、税務調査時でも安心です。
<参考記事>
国税庁 No.6625 請求書等の記載事項や発行のしかたhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6625.htm